地元の人がオススメする下諏訪の飲食店③
「蕎麦処 とんねるや」<長野県下諏訪町>

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長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖。その諏訪湖の北側に位置する下諏訪町は、かつての中山道と甲州街道が交わる要衝地であり、宿場町として栄えた地域である。なかでも御柱祭りで有名な諏訪大社下社の春宮・秋宮周辺は当時の名残りが色濃く残り、いまでも神社を中心とした地域社会が残されている。そんな宿場町で生まれ育ったという山田昌宏さんに、下諏訪の名所や見どころを案内していただいた。
(下諏訪町連載第6回)

 


 

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日が暮れた夕飯時に山田さんが案内してくれたのが「蕎麦処 とんねるや」。蕎麦どころの長野県で52年・親子2代にわたって営業を続け、地元の人はもちろん遠方からも訪れる人が多いという人気店である。この日はとても暑かったので、個人的にも重い食事は避けたいところだったのでありがたい。

 

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suwa06_05昨年新築されたばかりという店舗は、とてもキレイでイメージする町の蕎麦屋よりも数段格上の佇まい。暖簾をくぐってスグは、靴を脱がずに気軽に食事を楽しめるテーブルと椅子。奥へ進むと席の間がしっかりとられた座敷や対面型のカウンターになっていて、落ち着いてゆっくり料理を楽しめる空間がしつらえられている。ちょっと昼飯から会社や親族の宴会まで、人数や用途にあわせて座る席を選べるのも魅力のひとつ。

 

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細く切られた蕎麦は箸でしっかりつかまえられ、食べたい分量をスムーズに猪口に運ぶことができる。まずは頬張らない程度の量を口へ運んでみると、入れた瞬間薫りに驚き、噛んだ瞬間にはしっかりしたコシに驚いた。普段はあまりそばを食べない私でも、コレは美味い蕎麦だとすぐわかる…近くにあったら、蕎麦好きになっていたかもしれないと思うほどで、地元の人が多いというのもうなずける。

 

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「とにかく美味いから、ぜひ食べておきなよ」と山田さんに薦められたのがローストビーフ。甘みたっぷりの脂が溢れる刺身のように柔らかな肉とおろしたわさびの組み合わせはまさに絶妙!暑さでバテ気味だったが、 そばと天丼を食べてなお一皿をペロリと完食してしまった…。そば屋でローストビーフを提供しているのは珍しいので店主にお話をうかがうと、親戚に肉屋さんがいるのでまかない料理で出していたそうだが、「お店でだしてみたら好評だったのでメニューになった」という。厳密に調理法を言うと「ロースト」ビーフではなく、日本料理の調理法「たたき」で作られており、そのため生に近い部分も多いそう。山田さんは、この肉をどんぶり飯にのせた「ローストビーフ丼」をよく食べているそうだ。

 

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珍しいといえば、蕎麦屋の名前で「とんねるや」という店名もあまり聞かない名前だ。こちらも理由を聞いてみると、50年以上前の開店時の場所が関係しているという。仕出し屋として開業したのは長屋の商店街で、長屋間にトタン屋根がかかっている様子がまるでトンネルのようだったことから「トンネル長屋」と呼ばれていたそうだ。そこに揶揄の意味を感じた先代が反骨心を発揮し、あえて「とんねるや」と名付けたのである。それから半世紀が過ぎたいま、「とんねるや」の名称はかつての揶揄の意味合いを覆し、下諏訪の有名店として認識されるまでになっている。

 

 

●●●●●●店舗情報●●●●●●

店名:蕎麦処 とんねるや

所在地:長野県諏訪郡下諏訪町西豊6175-11

定休日:月曜日(祝祭日の場合は昼のみ営業)

営業時間:11:00〜14:30 (オーダストップ 14:00)
17:00〜21:00 (オーダストップ 20:30)

電話:0266-27-6315

HP:http://www.tonneruya.com

地元の人がオススメする下諏訪の飲食店②
「Cafe & Gallery ひとつぶの麦」
<長野県下諏訪町>

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長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖。その諏訪湖の北側に位置する下諏訪町は、かつての中山道と甲州街道が交わる要衝地であり、宿場町として栄えた地域である。なかでも御柱祭りで有名な諏訪大社下社の春宮・秋宮周辺は当時の名残りが色濃く残り、いまでも神社を中心とした地域社会が残されている。そんな宿場町で生まれ育ったという山田昌宏さんに、下諏訪の名所や見どころを案内していただいた。
(下諏訪町連載第5回)

 


 

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諏訪大社下社の春宮と秋宮をつなぐ旧中山道沿いに位置する「Cafe & Gallery  ひとつぶの麦」は、2017年にオープンしたまだ新しいカフェ。春宮と秋宮の中間あたりにあるうえ、「下諏訪町 伏見屋邸」や温泉街からも近く、下諏訪散策の途中で立ち寄るのにぴったりのお店だ。

 

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扉を開けると優しいご夫婦とふっくらしたネコが出迎えてくれ、入った途端に安らげる雰囲気。お話をうかがった奥さまの武山弥生さんは、スクールカウンセラーや特別支援教育士としても活動されていて、それらの仕事とも「ひとつぶの麦」はリンクしている。

 

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店内は明るく開放的な雰囲気で、大きな窓からは街道をいく人や車が見える。ドリンクメニューのイチ押しは、水が美味しいと言われる下諏訪のなかでも、特に美味しいと誇る水を使った水出し珈琲。また、天然酵母の手作りりんごパンは、酵母から手作りするというこだわりの一品だ。実はパンだけでなく、すべてのメニューで自家製・手作りにこだわっているという。

 

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ちなみに、夏季に提供されるかき氷は凍らせた果物がたっぷり!  ひとつぶの麦で提供されるメニューがどれも美味しく・健康的なのは、「子供に関わる仕事をしているから、お店でもきちんとしたモノしかださない」という武山さんの思いが込められているからなのだろう。

 

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様々なものを手作りするため、キッチンは広くゆったりとした造り。客室からカウンター越しにすべて見えるので、自分が口にするものが作られる過程を見ることもできる。また、スペースを利用して子供が調理を楽しむイベント「こども食堂」なども開かれているという。

 

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2階はイベントやワークショップもできるギャラリースペースになっていて、訪問時は発達障害のある少年の作品が展示されていた。人や物が行き交う街道沿いにあって「人が出会い・集まるプラットホームのひとつになりたい」という武山さん。このスペースはちょっとしたパーティや隠れ家喫茶的に使われることも多いというが、アートを通じて障害の有無を越えた交流の場としても活用しているそうだ。

 

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そんな「ひとつぶの麦」の営業時間は12:00~18:00で、その半分はランチタイム。手作りの食事メニューも豊富なうえ、開店時からアルコールを楽しめるのも魅力のひとつ。諏訪大社の秋宮・春宮間はランチを食べられるお店が少ないので、覚えておくととても重宝するお店だ。

 

 

●●●●●●店舗情報●●●●●●

店名:Cafe & Gallery  ひとつぶの麦

所在地:長野県諏訪郡下諏訪町3406

定休日:月曜日(不定休あり/Facebookでご確認ください)

営業時間:12:00〜18:00

電話:0266-55-7213

地元の人がオススメする下諏訪の飲食店①
「佳肴あり井(かこうありい)」<長野県下諏訪町>

suwa01_01長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖。その諏訪湖の北側に位置する下諏訪町は、かつての中山道と甲州街道が交わる要衝地であり、宿場町として栄えた地域である。なかでも御柱祭りで有名な諏訪大社下社の春宮・秋宮周辺は当時の名残りが色濃く残り、いまでも神社を中心とした地域社会が残されている。そんな宿場町で生まれ育ったという山田昌宏さんに、下諏訪の名所や見どころを案内していただいた。
(下諏訪町連載第4回)

 


 

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山田さんがお昼に案内してくれたのは、JR下諏訪駅から線路沿いを歩いて数分、前回紹介した松澤製糸所へも歩いて行ける「焼鳥居酒屋 佳肴あり井(かこうありい)」。通常は夕方からの開店だが、本当にオススメしたいという山田さんが店主に頼んで特別にあけていただいたのである。

 

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suwa03_03b店内はキレイに磨かれたL字型カウンターと約8畳ほどの座敷席。20人少々で満席になってしまうお店だが、旅先で風情を味わいたいなら丁度良い大きさだろう。基本的には店主の有井嘉徳さんが一人で切り盛りしているが、呑んでいる地元の常連さんが手伝ってくれることも多いというアットホームな店である。

 

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中心となるメニューは焼き鳥と信州の地酒で、カウンターの目の前でじっくり焼き上げられる焼き鳥は、地元の酒と醤油をつかった特製にんにくタレでいただくのがオススメ。しっかりした鳥肉の味わいに香り高いタレがあわさって、ついつい本数を重ねてしまう美味しさだ。常時15種類くらい置いているという日本酒は、酒蔵が多い諏訪だけに限定せず、信州(長野県)のすみずみから探し集めてラインナップしているという。メインの4~5銘柄以外は折を見て入れ替えているので、訪れるたびに新しい酒と出会えることも喜ばれているそう。

 

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そしてもう一つの名物が、本気で作っているという「居酒屋カレー」。洋食のシェフである父と弟さんにアドバイスを受けて作ったというカレーは、お酒を飲んだ後に食べても胸焼けしないよう、余分な油をスプーンでとりながら煮込む力作。肉のうまみが溶けこんだ深い味わいを醸しながらしつこさを感じさせない仕上がりは、カレーだけでも食べに訪れたいと思わせるウマさだった。

 

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ちなみに「佳肴あり井」という店名は、諏訪大社につけてもらった名前だという。名前をいただく時に「神職に『三年は大丈夫』って言われたけど、四年目からは知らねえのかよ」と笑って話す有井さんだが、それもこの地域の人だからこそ言える言葉なのだろう。諏訪大社や神官さんと下諏訪町の人々は、ご奉仕を通じて接する回数が特に多いため、他の地域とは異なるとても近い距離感があるのだ。

 

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お祭りの役員も務めたことがあるという有井さんは、諏訪大社や御柱のお話はもちろん「祭りと神事の違い」や「諏訪の神々の話」など、地元だからこそ知っている話題も豊富。ちょっといかつい見た目と気さくなトークのギャップは、観光で訪れた人にもきっと喜ばれるはず。佳肴あり井は、酒と肴に加えて「旅先で初めての店に入ったときの楽しさ」も存分に味わうことができる。

 

 

●●●●●●店舗情報●●●●●●

店名:佳肴あり井

所在地:長野県諏訪郡下諏訪町東鷹野町4922(中央線下諏訪駅 徒歩5分)

営業日:月~土曜日

営業時間:17:30〜23:00

電話:0266-27-0173

氏子だから知る諏訪大社下社秋宮
<長野県下諏訪町>

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長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖。その諏訪湖の北側に位置する下諏訪町は、かつての中山道と甲州街道が交わる要衝地であり、宿場町として栄えた地域である。なかでも御柱祭りで有名な諏訪大社下社の春宮・秋宮周辺は当時の名残りが色濃く残り、いまでも神社を中心とした地域社会が残されている。そんな宿場町で生まれ育ったという山田昌宏さんに、下諏訪の名所や見どころを案内していただいた。
(下諏訪町連載第3回)

 


 

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下諏訪町のというより、全国的にも有名な名所といえる諏訪大社。念のために説明しておくと、諏訪大社は諏訪湖周辺に上社本宮・上社前宮・下社春宮・下社秋宮の4ヵ所の境内地を持つ神社で、全国各地にある諏訪神社の総本社である。下諏訪町の中心部は下社と二つの街道を中心に発展してきた地域であり、そこに住む人々にとって、諏訪大社下社はとても生活に密着した存在なのである。

 

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秋宮を案内してもらう山田さんも下社の氏子だ。「神社があるおかげで町に良いことがたくさんあるのだから、氏子としてご奉仕するのは当たり前」といい、長年神社の行事にも関わっているため、ご神職の方ともお知りあい。ガイドブックには載っていない、地元の人ならではの案内をしていただいた。

 

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鳥居をくぐると両側が階段の坂になっていて、何にも気にせずに坂を登ろうとすると「中央は神様の通り道なので、避けるのが礼儀」と山田さんに止められた。知識としては知っていても、たまにしか神社に足を運ばない人はつい忘れてしまったりおざなりになってしまいがち。しかし、生活のなかに神社が溶け込んでいる人々は、こういったマナーも自然と受け継がれ身についているのだろう。二歩目からは「お宮に向かう時は左側を登る」という山田さんに習ってあとに続く。

 

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坂を登ると大注連縄が飾られた三方切妻造りの神楽殿があらわれる。1835(天保6)年に立川流の宮大工・立川和四郎富昌(たてかわしろうとみまさ)棟梁により建てられたと伝わり、1983(昭和58)年には国の重要文化財に指定された貴重な建造物である。出雲大社型では日本一の長さといわれている13mもの注連縄(しめなわ)は、氏子有志でつくる大注連縄奉献会の人々によって作られているとのこと。七年に一度行われる御柱祭の前年に新調され、いまの注連縄を作る際は山田さんの息子さんが参加しているそう。山田さん自身も若いころは注連縄づくりに参加しているといい、代々のご奉仕を誇りにしていることが感じられた。

 

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神楽殿まえに鎮座する狛犬は高さ1.7mあり、こちらも青銅製では日本一の大きさといわれている。制作者は文化功労者にも選ばれている諏訪郡原村出身の彫刻家・清水多嘉示(しみずたかし)氏で、美術品として見ることもできそうだ。

 

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神楽殿の左側を進んだところにある「子安社(こやすしゃ)」は、名前があらわす通り安産信仰で親しまれている摂社である。社殿にかけられたたくさんの柄杓(ひしゃく)は良く見ると底が無く、するりと楽に安産ができるようにとの願いがかけられているという。もちろん山田さんの子供や孫が生まれるときもここでお参りしているとのこと。みなさん安産だったそうである。

 

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「観光客の人はあまり知らないと思うのだけど…」と教えてくれた子安社の床下を覗くと…、そこには石でできた男性器と女性器が鎮座していた。諏訪大社で祀られている御祭神は十三柱の御子神をお生みになったご夫婦で、昔から子授けの信仰も深いという。ガイドブックはもちろんネットでもあまり情報がでてこないスポットだが、それゆえに秘められた力がありそうだ。

 

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最も奥まった場所にある幣拝殿は1781(安永10)年に建立され、随所に施された見事な彫刻が特徴。こちらは、神楽殿を建てた富昌棟梁の父である立川和四郎富棟(たてかわしろうとみむね)の代表作といわれ、神楽殿と同時期に国の重要文化財に指定されている。この拝殿の奥に二つの宝殿があり、御祭神である建御名方神(たけみなかたのかみ)と妃神・八坂刀売神(やさかとめのかみ)が祀られ、さらにその奥ではご神体であるイチイの古木が祀られている。最も古い神社のひとつとされる諏訪大社は自然信仰が受け継がれており、木をご神体として拝しているのである。

 

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そして、諏訪大社といえばの御柱(おんばしら)である。拝殿の四隅を守るように立てられる4本の樅の木は、拝殿の右手前から時計まわりに一の柱・ニの柱・三の柱・四の柱と呼ばれ、7年に一度立て替えられる。上社・下社あわせて4社分・16本の柱を山から曳いてくるのが、あの有名な「御柱祭」なのだ。

 

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下社の御柱は、下諏訪町の東俣国有林から氏子衆によって伐りだされる。伐採の副裁定委員長を務めた山田さんによると、若いころから木を調べて「雷が落ちていない」とか「不浄の件がない」木に狙いをつけているという。木落としの時に曲がらないよう「できるだけまっすぐ」であることも重要なのだそう。さらに「副裁定委員として年輪を数えたところ、この木は黒船が来たころ(1853年ごろ)に生まれた木だった」と教えてくれる山田さんを見て、この地域の人々にとって諏訪大社へのご奉仕は「あたりまえ」でありながら、自分たちだけのシンボルを持つ「喜び」にもなっていると感じた。

 

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取材を終えると山田さんは顔なじみのご神職へ挨拶をしに行った。神社と氏子そして町の生活リズムが、他の地域に比べて非常に近いのがこの地域一帯の大きな特徴なのだ。この連載の後半では、そんな下諏訪町で毎年行われる「お舟祭り」を紹介する。

 

 

 

画像提供(5枚目の神楽殿と11枚目の拝殿):諏訪フォトライブラリ