
庄川から少々離れた地区に位置する「相倉集落」は32戸ある住宅のうち、23戸が合掌造り家屋である。江戸時代末期から明治時代に造られた家屋が殆どであるが、最も古いものは17世紀ころの建築と言われている。菅沼より標高が高いため雪が多く残っており、吐く息も白くなるほどの寒さだった。また、空気が澄んでいるせいか、周りの景色もくっきりとしていたように感じた。

菅沼から相倉へ向かう際に立ち寄った店で頂いた「五箇山豆腐」。堅豆腐とも言われており、見ての通り非常に身が凝縮されていた。大豆の味が濃く、食べ応えも抜群!オススメは、添えられているワサビをたっぷりとつけること。大豆の甘みがより一層ひきたち、口いっぱいに広がっていく。

五箇山の幸がたっぷり入った山菜蕎麦。都内ではあまりお目にかかれない山の幸がたくさん入っており、山菜好きにはたまらない逸品。また、揚げた五箇山豆腐も入っており、あっさりと出汁のきいた蕎麦と相性が良い。五箇山に来たら、是非、味わっていただきたい。

お店のすぐ脇には、庄川にそそぐ小川が勢いよく流れ落ちていた。菅沼付近の庄川とは全く違い、激しい音をたて勇ましい姿を見せていたが、季節的には少々、寒さを増幅させるような景色であった。ただ、夏に暑さを凌ぐ場所としては最適であろう。

遺産として保存されているものは民家だけではない。田畑、山林や「茅場」と呼ばれる茅葺に必要な茅を取る場所も含まれる。また、雪崩から村を守る「雪持林(ゆきもちりん)」もそのひとつだ。様々な自然や生活環境が守られているからこそ、美しい風景を目の当たりにすることができる。

白川郷、菅沼と同様に相倉でも宿泊が可能である。山の幸、川の幸、イワナの骨酒など四季折々の女将さん特製料理を味わいながら、囲炉裏を囲んで語り部と共に過ごす時間は、とても貴重で有意義だ。また、一歩外にでれば日本の原風景が温かく迎えてくれる。そんな非日常を一度は経験してほしいと思う。

農家の方が作業している光景に出合った時、世界遺産の中で生活を送るって大変なのだろうなと思った。ただし、地元の方々にしてみれば、認定は後からついてきたもので、生活を大きく揺るがす問題ではない。先祖から受け継いだ歴史・文化を残す努力をした結果であって、決して無理を強いられているわけではないのだ。余計な心配をした自分が恥ずかしくなってしまった。

畑からひょっこり顔を出していた大根。厳しい寒さを乗り越え、まだかまだかと収穫を待っているように見えた。

高台から望む合掌造り集落。相倉の生活と歴史文化が一望できる場所である。白川郷、五箇山の魅力は冬にあるとの声も多いが、蝉が泣きじゃくる夏の季節にも訪れたいと思わせてくれる光景だった。青い空と緑に囲まれた里山は、また違った魅力を伝えてくれるに違いない。