
岐阜県の中央部に位置する関市は、鎌倉時代に刀匠・元重が移り住み刀鍛冶をはじめたといわれ、以降800年近く「刃物の町」として歴史を刻んでいる。毎年10月初旬の連休には「
刃物まつり」が行なわれ、メイン会場で「刃物大廉売市」が行われるほか、刀剣展や古式日本刀鍛錬・刀剣研磨等外装技術の実演、アウトドアズナイフショーなど様々な催しも実施。毎年多くの観光客が訪れている。

そんな刃物のまちに伝わる匠の技を紹介しているのが「
関鍛冶伝承館」。1階には数々の日本刀が展示されているほか、製造工程や歴史に関する資料も紹介されており、普段はなかなか接することのない「日本刀」の世界に触れることができる。さらに、2階には関市の刃物文化が生んだ近現代の刃物製品や、カスタムナイフ作家のコレクションがズラリ。世界に名が知られた「関の刃物」をよく知ることが可能だ。

1階で展示されている刀のなかには、この地で活動した二代目兼元(孫六兼元)による作刀の「関の孫六」も展示されている。刀に興味がなくても、その呼び名は聞いたことがある人は多いはず。ちなみに貝印の包丁ブランド「関の孫六」には、二十七代兼元・金子孫六氏による銘が入れられている。室町時代から守り続けられる屋号には、計り知れない重みと価値がある。

伝承館では刃物まつりの開催期間に加えて、毎月第1日曜日(1月、10月を除く)に日本刀鍛錬や技能師の実演が行なわれる。昔ながらの製法で刀を鍛錬する様は、なかなか見られる機会はない。装束に身を包んだ刀工が、赤くなるまで熱せられた玉鋼(たまはがね)を打ち付け激しく火花が飛び散る様は、思わず息をのんでしまう迫力だ。

関鍛冶伝承館に隣接する「濃州関所茶屋」は、関所をイメージした冠木門が特徴的な休憩施設。なかには郷土料理がたべられる食事処や、地域の名産品などを取り揃えた物産店があるので、伝承館とともに立ち寄るとよい。敷地内にあるイベント工房では様々な体験メニューも用意されている。

伝承館から徒歩3分ほどのところにある「
岐阜県刃物会館」は、市内に数多くある刃物メーカーの商品が、2000点以上取り揃えられている。包丁、鋏、ナイフ、爪切、模造刀、彫刻刀、キッチン用品など、見ているだけでも楽しいが、メーカー直販価格で買えるのも嬉しいところ。館内にある刃物研ぎ工房では「刃物砥ぎ」の体験もできる。

刃物会館の目の前にある世界初の刃物総合博物館「
フェザーミュージアム」では、刃物の歴史や文化を学べるうえ、「切る」の原理・原則などを楽しみながら学べる体験型コーナーも常設。ふだん気にすることなく使っている「刃物」の物語を知れば、以降の刃物の取扱い方が変わるのではないだろうか。
写真提供:一般社団法人 関市観光協会