山あいのなかで静かにいきづく上条の突き上げ形民家集落
〈山梨県甲州市〉

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茅葺民家が全国で何軒ぐらいあるかご存じであろうか? 2001年の全国調査の結果は、約10万棟で、その内の約8割は茅屋根を鉄板で覆ったものだった。茅屋根のままのものは実に少ないのである。そんな貴重な茅葺屋根を駅前で見られるのが、JR中央本線塩山駅前にある国重要文化財の高野家住宅だ。1960(昭和35)年の改修時に銅板で茅屋根を覆ってしまったが、全国的にみてもこんな駅に横付けの事例はどこにもない。
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現在は甲州市所有で一般公開中されているこの屋敷は、江戸期より薬草である甘草を栽培していたことから甘草屋敷と呼ばれ、大きな屋根の中ほどを切りとってかさ上げしたような形が特徴である。これは、甲州独特の「突き上げ形」と呼ばれる民家で、屋根裏は養蚕に適した空間をそなえている。大きな土間や囲炉裏、そして座敷。屋根裏に上がればダイナミックに組み上げられた大きな柱と梁に圧倒されるであろう。
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甘草屋敷のあとは、突き上げ形民家が身を寄せあって建ち並ぶ、養蚕民家集落を訪ねてみてはいかがだろうか? 甘草屋敷から車で10分ほど坂道を上った位置にある上条集落は、自然の地形に逆らうことなく等高線に沿って、突き上げ形民家が二十数棟建ち並んでいる。いずれも茅葺屋根に鉄板を被せてはいるが、江戸期や明治期のようすをよく伝えている。
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集落の入口には約200年前に建てられた観音堂がある。防災や盗難対策にも力を注いだ建物としてあわせて修復を実施し、この時点で鉄板葺から茅葺屋根に復元された。お堂の中には、木喰白道(木彫師・仏師)による素晴らしい百観音菩薩像(市指定文化財)が収められ、集落のみなさまがたいせつにお守りしている。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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