「まんだ、来るはんで~」 江戸の面影を残す「こみせ」通りと津軽三味線
<青森県黒石市>

「日本の道百選」にも選ばれた「こみせ通り」を行くと、津軽三味線の生演奏が毎日無料で楽しめる「津軽黒石こみせ駅」がある。お土産店と食堂を兼ねそなえたようなところ。
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ちょうど印半纏姿の名人が演奏中であった。最近B級グルメとして売り出し中の「つゆ焼きそば」を注文。焼きそばの概念を吹き飛ばすような複雑な食感と味は、腹に響くような津軽三味線の響きとともに印象に残る。
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「こみせ」とは冬場の風雪や夏場の強い日差しを防ぎ、安心して町を歩くことができる木造のアーケードのような仕掛けで、商家の表側に設えられている。所変われば品変わるではないが、新潟県小千谷市や長野県飯山市ではこの手の装置を「雁木」といい、呼名が変わるからおもしろい。中町のみなさんは、この「こみせ」を地域のシンボルとして長年愛し、行政と力を合わせて保存活動を行ってきた。その成果もあって、平成17(2005)年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
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築270年以上経過しているという高橋家住宅(国重要文化財)は、藩政時代は黒石藩御用達の米問屋だったという。いまは喫茶店になっているので、井戸水でいれたおいしいコーヒーが飲める。
 
この町を訪れてみるなら、「こみせ」が本領を発揮する豪雪の冬場がおすすめである。除雪された雪が積み上げられた道路をよそに、「こみせ」の内部には一直線に歩道が確保されているからありがたい。すれ違う人に自然に挨拶をしてしまう、こころ暖まる交流空間でもある。
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明治期の黒石は、米穀のほかに特産物が少なく、良質の米と清水をあわせもっていたことから酒造が盛んであった。改良酒の研究が熱心で、品質面では全国の上位に食い込み、「黒石の酒」として名をはせた。当時は11軒ほどの酒造業者があったが、現在も「菊乃井」・「玉垂」の2社が伝統を受け継ぎ、銘酒を造り続けている。それぞれに伝統的な店構えで「こみせ」と調和し、また店の内へ入ると、広い土間から座敷へと続く伝統的な商家の造りが魅力的な空間を演出している。
 
ちなみに「まんだ、来るはんで~」は、「また、来ますからね~」の津軽弁。
 
写真/米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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