日本最西端の駅に降り立ち、はじめての西欧文化との遭遇に想いを馳せる
<長崎県平戸市>

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世界地図を開けば、日本列島はユーラシア大陸の東端にある島嶼、その東には広大な太平洋が広がるのみ。かつて外来の文化は、ほとんど西からやってきた。日本最西端※の駅として有名な「たびら平戸口駅」は、日本でいちばん西を走るローカル鉄道、松浦鉄道の駅である。(※沖縄都市モノレールは普通鉄道ではないため)
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この平戸は、1977年封切の映画「男はつらいよ」第20作、大竹しのぶがマドンナを演じた「寅次郎頑張れ!」のロケ地である。寅さんシリーズのロケ地は、ほんとうにいい町が多い。
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九州本島である松浦半島の田平と平戸島は、上記の映画ではまだ連絡船で結ばれていたが、いまはこの平戸大橋によって繋がっている。
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映画でも登場した「幸橋(オランダ橋)」は、城と城下町を繋ぐ石造アーチ橋。オランダ商館の建築に従事した石工によって架橋されたという。現在の橋は、1984年に解体・改修復元されたもの。
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平戸のシンボルでもある平戸城は、平戸藩主松浦(まつら)氏の居城で、別名亀岡城とも呼ばれる。現在の天守閣は1962年に復元され、その後櫓などが随時整備されたものというが、町と港と海を見晴らせる望楼からの眺めは絶景というほかない。
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海岸から山間へと続く「春日の棚田」は、長い年月にわたって生活の基盤を守り続けてきた歴史的風景を代表するもののひとつ、国の重要文化的景観に選定されている。
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「平戸ジャンガラ」は、市内9地区に伝承されている念仏踊で、祖先供養・五穀豊穣祈願などの意味をもつといわれる。“じゃんがら”といえば福島県のいわきを中心とした地域に伝わる民俗芸能も有名だが、ずいぶん離れた土地で同じ呼び名があるのは面白い。死者の霊を慰める盂蘭盆会の行事と、空也や一遍を起源とする念仏踊のようなものが、どこかで融合したのかもしれないし、一般の盆踊りとルーツは同じなのかもしれない。民俗芸能は資料が少なく、起源などははっきりしないようだが、日本文化の奥深さを感じさせる。
オランダ商館
さて、ここ平戸は、約四百年ほど前、日本で最初の西洋貿易港となった地。幕府により商館が長崎の出島へ移転されるまで、1609年より33年間、平戸は日本唯一のオランダ貿易港であり、はじめてヨーロッパ文明に本格的に触れた土地である。写真の「平戸オランダ商館」は、1639年建造のオランダ商館倉庫を忠実に復元した資料館。また、かつての商館跡には、塀、井戸、埠頭、石垣などの遺構が現存し、はじめて西欧世界と接した西端の町の歴史を彷彿とさせられる。
 
そして、いまもその歴史をもっとも色濃く残しているのは、数多くのキリスト教教会であろう。現在も人口の約1/10がキリスト教を信仰し、14のカトリック教会がある。わが国への最初のキリスト教伝来は、1549年鹿児島に上陸したフランシスコ・ザビエルによる布教とされているが、実は鹿児島での布教はうまくいかず、翌年ザビエルは平戸へ来ている。そして武器の輸入など貿易に有利に働くこともあって、当時の領主・松浦隆信が宣教師に好意的に接したため、この地でキリスト教が広まることになったようだ。
 
そして、ちょうど仏教組織と対立していた織田信長が、キリスト教を保護するようになったことで、信徒は全国に広がった。ところが、豊臣秀吉が宣教師追放令を発布、その後、徳川家康が切支丹の禁令を発布して、明治になるまでキリスト教禁制がつづく。1645年、平戸でも長崎奉行所より借り受けて踏絵がはじめられたという。それでも禁制下ひそかに信仰を守ってきた信徒、潜伏キリシタンはかなりの数に上ったといわれる。平戸では、“納戸神信仰”といって、表向きは神棚と仏壇を祀るが、奥の納戸にキリシタン祭具を隠し、また小さな集落単位で秘密組織をつくって、祈祷文「オラショ」を唱えて信仰を続けたといわれる。明治以降に禁教令が解かれて潜伏する必要がなくなっても、江戸時代の秘教形態を守る信者も多かったといわれる。
ザビエル
市街地の丘の上に高くそびえる尖塔が象徴的な「平戸ザビエル記念教会」。平戸を代表する風景となっている。
紐差教会
「カトリック紐差教会」は、外部は東洋屈指ともいわれるロマネスク様式、内部は美しいアーチとステンドグラス、柱の少ない大きな内部空間が荘厳な雰囲気を醸し出している。
田平天主堂
大正7年、信者たちの手によって建設されたという「田平天主堂」。ロマネスク様式の赤レンガづくりが、歴史と威厳を感じさせる。教会堂棟梁・鉄川与助の代表作といわれ、国の重要文化財に指定されている。
宝亀教会
1898年に建造された「カトリック宝亀教会」は、平戸で最も古い教会。正面から見ると重厚なレンガ造りだが、建物自体は木造瓦葺の平屋である。大きくはないが美しい教会、なによりここから眺める海の景観がまた素晴らしい。
中野教会
「カトリック中野教会」は、1952年念願の教会堂として建てられたもの。この地区の信徒は、250年間潜伏し続けたのち、ようやくカトリック信仰を表明したという。
 
写真提供:長崎県観光連盟
 
※教会の写真撮影・掲載に当たっては大司教区の許可をいただいております。
※教会は、大切な祈りの場であり観光施設ではありません。見学の際はマナーをお守りください。入口の注意事項を一読の上、脱帽して静かにお入り頂き、カメラ撮影・飲食・喫煙等はしないようお願いいたします。
 
※平戸市内の公共交通はかなり不便です。鉄道で行かれる場合は、レンタカーまたはタクシーがおすすめです。

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レポーター

岡崎 聡

「町旅」編集部

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