山手西洋館めぐり#05 ベーリックホール(2F)
〈神奈川県横浜市〉

つぎは2階です。パブリックな使用を兼ねる1階の居室に比べ、2階はほとんどが寝室などの家族のプライベート空間で占められています。その中で、とりわけ女性に高い人気を誇るのが、この子供部屋です。じっさいに部屋に入った瞬間に「かわいい」と声を上げる女性たちをこれまでに何度も目にしました。
IMG_0127r
この部屋に入ると、まず最初に目につくのが印象的な「クワットレフォイル(四つ葉型)と呼ばれる小窓」とブルーに塗られた部屋の壁です。クワットレフォイルと言うのは、Quatre=4、Foil=葉 のことで、元を辿ると?どうやらイスラーム建築に行き着くようです。欧米でも、ゴシック建築と呼ばれる教会や大聖堂などの窓の装飾に頻繁に登場する意匠です。このクワットレフォイルのお洒落な窓がこの館には、南側に4つ、北側に2つの合計6つあるそうです。
IMG_0884
青い壁の方は、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」などと同じフレスコ画の技法が用いられています。壁に石灰モルタルを塗った後、乾いていない状態で水でといた顔料を塗ると、石灰と顔料が化学反応をおこして結晶ができ、顔料が閉じ込められて明るく発色する、その習性を利用したものです。この青い壁と小窓の青の窓枠が太陽光を背に浮かび上がる様子は「おしゃれ」と「かわいい」に目がない現代女性たちのハートをいたくくすぐるようです。
IMG_0919
また、この部屋は復元時に小さな男の子の部屋として設定されたため、少年の部屋にふさわしい、クマのぬいぐるみや乗り物のおもちゃなどが置かれています。結果として窓や壁などのおしゃれな内装との相乗効果で可愛さがギュッと凝縮されたような雰囲気の部屋に仕上がっています。
toys
さらに、この部屋の家具は当時のものが残っていないため、すべてが横浜家具で復元されたそうです。部屋全体を覆うブルーに対して、黄色の優しいクリームカラーで統一された「ベッド」「本棚」「デスク」「引き出し箪笥」「おもちゃ箱」らが置かれています。部屋全体の壁を覆うアズール(緑みがかった青)の深みのある大人色のイメージを薄めて、知育にも良さそうなすっきりとして可愛いらしい子供部屋に落ち着いています。
IMG_0882r
2階の各部屋には専用のバス・トイレがそれぞれにつき設置されています。こちらは子供部屋に付属のバスルームです。ベリック氏の子息は、ここが建築された当時すでにベリック商会に勤務する青年であったことが確認されていますので、おそらくこのバスルームの方は(居室と違って)当時使用してたものに近い雰囲気ではないかと想像します。
IMG_0887r
子供部屋の隣は、もとは客用寝室でしたが、現在は応接室として展示されています。これまで何度か塗り替えられてきた各室内の内壁も、現在は、創建当初の色に復元されているそうです。全体として、和風住宅では見られないような大胆な色使いが特徴的です。また部屋ごとに異なる基調カラーは、見る部屋ごとにガラリと違う印象を与えます。深い緑の壁紙を使ったこの部屋は、ダークマホガニー(のように見える板材)の赤味がかったキャビネットや、モカブラウンの応接セットを美しく引き立てています。
IMG_0902
応接室にもクワットレフォイルの小窓があります。この個性的な装飾の窓では、一見、他の家具との相性や組み合わせが難しそうに思えますが、じっさいには左隅に置かれているようなクラシカルスタンダードタイプのキャビネットや、修飾的な縁飾りのある華やかで個性的な鏡などともよく調和して、違和感なく溶け込んでいる印象です。
2F洗面3
客室(応接室)専用の浴室にもクワットレフォイルの小窓が使われていました。ブルーの窓枠と呼応するかのように青いタイルで壁面を化粧張りされた、地中海をイメージさせる美しい浴室です。白に黒のスクエアドットをあしらった床面のパターンタイルは3つの浴室ともに共通で、おしゃれ度も高く、魅力的にまとまっていました。
IMG_0925
現在、執務室として展示されているのは、元は主人用の寝室です。共用のバス・トイレは夫妻それぞれの部屋の中間に位置しています。この部屋を夫人部屋と同じ「寝室」ではなく「執務室」のしつらえにしたのは、子供部屋を小さい男の子用に設定したのと同様に、来館者をできるだけ楽しませるための工夫(配慮)なのかもしれません。
IMG_0892
執務室にふさわしい重厚なデスク。佇まいにも味があるアームチェア。
IMG_0888
年代物の古いタイプライターは存在感があり絵になります。
IMG_0929
執務室(旧・主人用寝室)と部屋続きになっている隣が、夫人用の寝室です。こちらは創建当初から夫人用の寝室として使われていました。部屋の基調カラーは、ピンクで、この部屋に一歩入ると、女性なら誰もが安らぎと居心地の良さを覚える、そんな雰囲気の部屋です。
IMG_0930
夫人の部屋には、隣室にはないポーチが付属しています。これは、遠い異国で生活する夫人の気持ちを少しでもなぐさめようとする配慮では?という見方がされています。庭木の緑、温かな陽光、港の景色などの心を和ませる風景がここからは望めました。
IMG_0936
今でもこの場所に立つと、船の汽笛が聞こえます。2F洗面
主人と夫人の共用のバスルームです。こうやって順番に見ていくと、2階の3つのバスルームのうち、客室だけに「四つ葉の小窓」があしらわれていることに気付きました。やはりお客さまは特別という気持ちの表れでしょうか。また、こちらのバスルームのバスタブの色は濃い目のペパーミントグリーンで、クリーム色のタイルとの配色も美しく、この配色の美しさはここに限らず建物全体に強く感じたことでした。
 
写真:乃梨花

INFORMATION

レポーター

乃梨花(「町旅」女子部)

ひとり暮らしの猫飼い人ゆえの
ショートトリップ派
(➕日本酒党❤️)

関連タグ

関連記事

エリア

(Categories)

タグ

(Keywords)

すべてのタグを見る

おすすめ記事