昭和レトロを満喫し、ラビリンスを抜け、目指すは“鬼が島”
<香川県小豆島町ほか>

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小豆島といえば何を思い浮かべるだろうか?明るい陽光、穏やかな海、もしくはオリーブ、あるいは「二十四の瞳」だろうか。すると、大石先生は、高峰秀子?田中裕子?それともTVドラマ版のどれか?誰を思い浮かべるかは、世代によって分かれるだろう。
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思い浮かべる女優の顔はさまざまでも、この物語が長年にわたって愛される理由は、この瀬戸内の島の風景抜きには考えられないだろう。「二十四の瞳映画村」は、二代目の映画(監督:朝間義隆、主演:田中裕子)のロケ用オープンセットを改築したもので、昭和レトロな町並みが再現されている。村のなかには「ギャラリー松竹座」「キネマの庵」「壺井栄文学館」「木造校舎(岬の分教場)」などの施設があり、日本映画の黄金期を彷彿とさせる映像や展示もたくさん揃っている。また各種ショップも充実しているから、映画ファンならずとも、在りし日の懐かしい雰囲気を満喫しながら、たっぷりと時間を楽しむことができる。
 
 
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さて、小豆島の伝統産業を代表するものといえば、400年の歴史があるといわれる醤油づくりである。古来から良質の塩を生産していたことと、活発な船の交通によって大豆や小麦などが九州からもたらされたことが、この島で醤油醸造が発達した背景である。明治以降の近代化によって鉄道が整備されるまで、物流の主軸は船であった。とくに瀬戸内は波が穏やかで、九州と畿内を結ぶ海上交通の大動脈であった。
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醤(ひしお)の郷は、醤油蔵や佃煮屋が軒を連ねる一帯を指す呼び名。いまも多くの企業が操業しており、あたりは醤油の芳ばしい香りで包まれている。マルキン醤油記念館をはじめ、記念館や物産店などもあり、ぶらぶらと町歩きを楽しむにはうってつけ。甘いものが欲しくなったら、「しょうゆソフトクリーム」や「もろみソフトクリーム」など、ここにしかないご当地ソフトをぜひご賞味あれ。いずれも絶妙の味だ。
 
 
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醤油の町を見た後は、日本の棚田百選に選ばれた「中山の棚田」にも、ちょっと立ち寄ってみたい。800枚を超える田んぼが、瀬戸の明るい陽光を受けて煌めく姿はたいへん美しい。
 
 
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さて、土庄町(とのしょうちょう)の中心部に位置する入り組んだ路地、通称「迷路のまち」。カーブが多く見通しのきかない路地には、古い商家や民家が立ち並び、やみくもに右に折れ、左に折れ進んでいくと、すれ違うのが難しいような狭いところを抜け、突然行き止まりになって回れ右させられたり、見知らぬ角を何度も曲がったのに、いつしか同じ場所へ戻っていたり、秘密の鍵を探しにラビリンスをめぐる冒険家になった気分である。この独特な町並みは、海賊から身を守るため、また海風から生活空間を守るために造られたといわれる。いったいどこへ抜けるのか?とワクワクしながら、懐かしい路地をぐるぐるめぐる。町歩きの醍醐味が存分に楽しめる場所だ。
 
 
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最後は、小豆島を離れて、“鬼ヶ島”へ行ってみよう。桃太郎伝説が伝わる土地はいくつかあるが、そのうちのひとつが、ここ香川県。高松市沖合の女木島が、鬼ヶ島だとされている。集落には木造の平屋や二階屋が建ち並び、とても静かでゆったりした島である。しかし、この島の特徴は家並でなくその外側である。船が港に近づくと、家々の高さを超えるほどの石垣が異様な風景をつくりだしているのにびっくりする。冬になると島で“オトシ”と呼ばれる強い季節風が吹く。それによって海沿いの家には、波しぶきとともに霧状になった海水が入り込む。このため屋根の高さほどの石垣を築いて家を守ったのだという。いや、この光景を目の当たりにすると、ここが“鬼ヶ島”だというのもうなずける。昔話では鬼は何も悪事をはたらかない。こどものころ不思議に思った人もいるだろう。陸の政治勢力が海の勢力(海賊)を平定した話だとすれば、なるほど、ではある。とはいえ、それじゃあ、ちょっとファンタジーには欠けるなあ。

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レポーター

岡崎 聡

「町旅」編集部

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