大正・昭和のモダンな風情を残す町並みと4000年の時を超える縄文集落跡
<岩手県一戸町>

一戸の町並みは、かつて国道であった道沿いに看板建築や木造の商家、旅館などが並んでいる。往時はそうとう大きな町であったことを連想させる町並みは見事である。
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懐かしい店構えが多く目につくが、中でも「平孝商店」はユニークだ。荒物屋なのか雑貨屋なのか?箒やスコップほか、日用品がところ狭しと並べられている。
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向町辺りには、平入りで木造二階建ての間口の広い商家が並ぶ。プロポーションが美しい。店いっぱいに本が並ぶ一守書店の看板には、色あせたドラえもんがほほ笑んでいる。どこか大正から昭和の香りが漂う映画のシーンを思い起こさせる町並みである。
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駅前からの道が萬代橋を渡ったところから左に直角に曲がって続いているが、ちょうど突き当たりの位置に古めかしい映画館が建っている。それが「萬代館」だ。スクラッチタイルを腰に巻いた鉄筋コンクリート造りの建物はモダンで、ロケーションといい存在感といい、一戸のシンボルである。現在もカシオペア映画祭などを開催していて、有名な映画スターも招かれている。特筆すべきは映写機で、1956(昭和31)年のフジセントラル製、カーボンアーク方式というのだそうだ。
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いまはただの路地のように見えるが、町中を貫く旧奥州街道である。
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古き良き時代がそのまま保存されているような駅前の蕎麦屋。1968(昭和43)年10月の東北本線全線電化まで、急こう配や急カーブの連続する峠越えの難所を越えるため、補助のD51形蒸気機関車の基地として栄えたという。往時は、機関区の国鉄職員御用達だったらしい。
 
そして、駅からタクシーで5分ほどのところに、御所野遺跡はある。現在は公園として整備されているが、縄文時代中期後半(4000~4500年前)の集落跡だ。土屋根住居や樹皮葺き住居、掘立柱建物などが復元されており、配石遺構はそのまま展示されている。大正・昭和の町並み、そして縄文の遺跡、悠久の時間の流れについて考えさせられる町である。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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