かつて鉱山で栄えた町は「近代化遺産」活用で先駆ける
〈秋田県鹿角郡〉

小坂町は東北屈指の鉱山町である。鉱山町は全国にあるが、小坂町はちょっと先を行っている。町を挙げて鉱山関連の歴史的建造物群を、近代化遺産として文化財に位置付け、小坂らしい町づくりに生かしているからだ。つまり文化遺産を積極的に観光資源として活用している先進地なのだ。「近代化遺産」とは、「我が国の近代化に貢献した産業、交通、土木遺産」の意味で、小坂町はまさにその宝庫でもある。そして、小坂鉄道も当然この近代化遺産の範疇に入る。小坂町は、鉱山ゆかりの歴史的建造物群と小坂鉄道をセットで保存・活用することで、町に長く続く発展と賑わいがもたらされると考えたのだ。
02 ヨーロッパの町並みを思わせる明治100年通り 大
町の顔になっているのが「明治百年通り」だ。毎回、訪れるたびに欧州の町並みを歩いているような錯覚にとらわれるほど、歴史的建造物、植栽、ニセアカシヤ等の並木が作り出す、整然とした美しさに感動してしまう。鉱山町が持つ公害のイメージを払拭して造られた通りはいつも華やいでいる。
05 現役の劇場 康楽館(国重要文化財)
14 康楽館(国重要文k財)の内部。産業観光フォーラムの会場に使用
通りの中心になっているのが、1910(明治43)年に建てられた国重要文化財の演劇場「康楽館」や、1905(明治38)年に建てられたルネッサンス様式の小坂鉱山事務所(国重要文化財)だ。いずれも、移築され修理後に再活用されている。康楽館は年間を通じて寄席、演劇等で賑わっている。
03 鉱山事務所(国重要文化財)
13 ライトアップされた小坂鉱山事務所(国重要文化財)
また、小坂鉱山事務所威風堂々とした立派な姿は、町の品格を高めている小坂町のシンボルである。内部は、鉱山資料館やレストラン、物産販売のほか、明治時代のレンタル衣装に着替えて、館内での撮影を自由に楽しめる「モダン衣装室」がある。
明治百年通りにはこのほかにも、1932(昭和7)年建造の保育園「天使館」(後の聖園マリア園)や1908(明治41)年建造の旧小坂鉱山病院記念棟といった国登録有形文化財が並び、歴史的景観をたかめている。12 木骨レンガ造りの観光案内所
また、平成26年10月、木骨レンガ造が珍しい旧小坂鉱山工作課原動室が移築復元された。1904(明治37)年に建てられたこの建物は「赤煉瓦にぎわい館」と命名され、観光案内所として活用されている。愛してやまない「明治百年通り」の歴史的町並み景観がより一層充実した。
01 廃線跡を行くレールパーク(最初)
09 旧国鉄の保線車両
そして長年の構想、計画を経て「小坂鉄道レールパーク」が平成26年6月にめでたくオープンした。小坂駅や構内全体を丸ごと文化観光施設として再利用している。動態保存されているDD13形を始めとした機関車は4両、他に元国鉄のラッセル車や保線用車両など顔ぶれは多彩だ。他に体験乗車では、ディーゼル機関車の運転体験が人気を呼んでいる。約600mに及ぶ路線が数本ある広い構内で本物の機関車を運転できるのであるから実に魅力的だ。また、駅構内から大館方面に伸びた軌道ではレールバイクの運転が盛んで子供たちの歓声が響く。06 復元された小坂駅舎
歴史的建造物群だけではなく鉄道をも近代化遺産として活用したことが決め手となり、小坂町は再び輝きを増し始めている。地方創生の方策を模索している自治体は多いが、地域の特性や地域遺産の価値を見出すことがその出発点であることを小坂町は教えてくれる。″小坂町ダイナミズム〟に敬意を表したい。
 
写真:米山淳一

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レポーター

米山 淳一

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●酔余の町並み(駒草出版)
●続・酔余の町並み(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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