ジュグリットめぐる
「国宝の神社」と「職人の町」
<熊本県人吉市>

鎌倉時代から明治の廃藩置県まで、相良氏による統治が続けられた人吉。近代に入っても交通の要衝として発展した城下町だ。職人町の香りが漂う「鍛冶屋町」という名前に誘われて訪ねたのである。
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町歩きを楽しもうとすると、「町歩きの前にぜひ」と駅の観光案内所の方にすすめられたのが「じゅぐりっと号」である。カタカナで書くとなんだかフランス語みたいだが、人吉地方の方言だ。ジュグリットは「ゆっくり」という意味だそうだ。幸運にもこの日最終のバスに乗車できた。1日500円、一方通行で町なかの名所をぐるりとまわってくれる優れもので、国宝に指定されている青井阿蘇神社から始まって、人吉城址などをめぐる。自然と町のようすや地図が頭に入り、とても便利である。
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人吉自慢の歴史的町並み地区である「鍛冶屋町通り」を歩く。老舗の味噌屋、酒屋、お茶屋などの町並みの並びに、名前の通り1軒の鍛冶屋があった。包丁、鎌、鍬などが店先に並び、奥には作業場を見つけた。火を焚く炉も現役だ。聞いたところによると、江戸期には60件以上の鍛冶屋が並んでいたというから驚いた。鍛冶屋町通りはどう見ても200メートルくらいの距離でしかないので、当時はところ狭しと鍛冶屋が建ち並んでいたに違いない。野鍛冶も刀鍛冶もいたのであろう。
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かっての鍛冶屋に変わりひしめいているのが、焼鳥屋や居酒屋。現在の「鍛冶屋町通り」は繁華街でもある。そんな町並みの中ほどに「西洋食堂」なる看板を見つけた。どう見ても軒の低い歴史的町家であるが、木のドアが洋食屋っぽい。シェフに聞くと「100年以上前の町家です」とのことである。
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店内に入り特製カレーを注文した。素朴な味わいの手作りルーは、鍛冶屋町通りの老舗のお茶、味噌、醤油を練り込んだまさに職人の味であった。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

地図

レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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