長き時を刻む「野良時計」と厳かな静けさを湛える「土居廓中」
〈高知県安芸市〉

04 aki 安芸と言ってすぐに連想するのは宮島だが、高知県の安芸市には憧れの宝がある。それは「野良時計」。1970(昭和45)年秋からスタートした国鉄の旅行キャンペーンをご記憶だろうか?「美しい日本と私」をテーマとした″DISCOVER JAPAN〟である。駅に掲出された大判の写真ポスターは旅心をそそる見事なアングルの絵柄。合わせて国鉄提供TV番組「遠くへ行きたい」がスタート。「安芸の野良時計」を知ったのもこの番組だった。蓮華が咲き乱れる田園と、農家の屋根に鎮座する野良時計の映像を見て感動した。野良時計の前を農道が走り、様々な人がその前を通り抜ける。のどかな日常がそこにあった。
03 aki
野良時計のすぐ北側には武家屋敷がある。安芸駅構内にある「安芸駅ぢばさん市場」で自転車を借りて行けば、野良時計も含めていろいろ見てまわりやすい。
06 aki
土居廓中と呼ばれる重要伝統的建造物群保存地区は、戦国期の安芸氏の拠点。江戸期に土佐藩主山内一豊の命を受けた家老五藤為重が入り、かつての町割りを基本に町を再整備。土居に屋敷を構えるとともに、土居の東、西、南側に武家屋敷を設け土佐藩東部の拠点とした。
08 aki
 
05 aki土居廓中とは、明治期になって土居と周辺の武家屋敷を合わせた地区の総称である。武家屋敷は、今も住居として使われ、門、土蔵、主屋が保存されている他、江戸期のままの道幅、玉石を用いた水路や四ツ辻の他、土用竹(ホウライチク)、ウバメガシの生垣、河原石と瓦を用いた塀などの特徴的な遺産が多く見られ、歴史的風致を実感できる。
10 aki
09akiしかも、武家屋敷地内は静寂そのものだ。一般公開されている野村家住宅(国登録有形文化財)は、五藤家の重鎮で財政、人事を担った惣役であった。桟瓦葺、木造平屋建の主屋、門、別棟風呂、便所棟、納屋、井戸等から江戸後期の武士の暮らしを偲ぶことができる貴重な存在だ。
14 aki
昼飯は、自転車を借りたぢばさん市場で購入した「鯖寿司」。鯖寿司と言っても見慣れた形とはほど遠く、まるで鯖の姿寿司。〆具合が絶妙で実に旨い。秘密は、酢。米酢ではなく土佐のゆず酢を使用している。姿も味も別物の鯖寿司の隠し味は、特産のゆず酢だったのだ。お土産にゆず酢を購入し、家で〆鯖を作った。それなりの味になったが何か物足りない。違いの決め手は、何を隠そう歴史的風土に他ならない。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

地図

レポーター

米山 淳一

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●酔余の町並み(駒草出版)
●続・酔余の町並み(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

関連タグ

関連記事

エリア

(Categories)

タグ

(Keywords)

すべてのタグを見る

おすすめ記事