のんびりレトロな電車に乗って、神話の国をめぐる
<島根県出雲市>

出雲大社へは、JR出雲市駅から乗り換えて、“ばたでん”こと一畑電車が便利だ。映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」のロケ地としても有名になったが、一畑電車の車両は、ほとんどが関東・関西の第一線で活躍していた名車達。田園のなかをゆっくり走る姿がとても愛らしい。
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写真は、大社線への乗換駅「川跡」にて。左が、出雲大社前へ向かう元東急電鉄の1000系。東急・東横線と東京メトロ・日比谷線の直通運転で活躍した車両だという。右は、松江しんじ湖温泉へ向かう元京王電鉄5000系。京王線とは線路幅がちがうため、台車を営団地下鉄のものと付け替えている。懐かしい香りのする運転台も素敵だ。
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出雲といえばもちろん古事記に登場する「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」を祭る出雲大社。旧暦10月は、八百万(やおよろず)の神々が出雲の国に集まるので、全国的には神無月だが、ここ出雲では神々が集うので神在月。出雲大社は、いわゆる縁結びの神様として有名だが、男女の縁に限らず、神在月にたくさんの神々が集っていろんな縁を結ぶ会議をすることに由来するのだそうだ。境内のみならず、土地そのものに、悠久の時間と霊気を感じる場所である。

ぜんざい
(写真提供:島根県観光写真ギャラリー)
さて、“ぜんざい”の発祥地が出雲だって知ってました?神在月の神事「神在祭(かみありさい)」で振る舞われた「神在(じんざい)餅」が起源なのだとか。その「じんざい」が、出雲弁で訛って「ずんざい」、さらには「ぜんざい」となって京都に伝わったのだという。なるほど、ですよね。

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鉄ファンのみならず、一度は見てみたいのがJR旧大社駅。明治45年の開業から出雲大社へ参拝する多くの乗客を運んだが、残念ながら平成2年に廃線となったJR(旧国鉄)大社線の終着駅。出雲大社の門前町にふさわしく、神社様式を取り入れた格調高い木造建築。
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駅舎へ入ると、高い天井と広い空間に圧倒される。大正風の灯篭型の和風シャンデリアがしゃれている。屋根にも特徴があり、中央に千鳥破風が取り付けられ、棟には鴟尾(しび)がのり、各破風には懸魚(げぎょ)が付けられている。瓦も一般の物より大きい特製品で、玄関中央の懸魚の上野瓦は国鉄マークである動輪があしらわれている。
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平成16年に国の重要文化財に指定された豪壮な駅舎と、終着駅の線路が旅情を掻き立てる大社駅、構内には日本を代表する蒸気機関車D51も保存されている。

築地松
(写真提供:島根県観光写真ギャラリー)
そして、出雲地方独特の風景といえば、この築地松(ついじまつ)。日本海からの厳しい季節風を防ぎ、斐伊川の氾濫から土地を守るなどが目的といわれている。屋敷の西側と北側に植えられた黒松が、一定の高さに刈り整えられ、とても美しい景観を形づくっている。長い年月をかけて培われてきた景観は、その土地固有の文化を顕していておもしろい。

木綿街道
(写真提供:島根県観光写真ギャラリー)
ではまた、“ばたでん”に乗って、ちょっと足を伸ばしてみよう。雲州平田駅で降りて「木綿街道」へ。平田は、14世紀から近江商人らによって開拓され、商人の町として栄えたところ。江戸末期から明治初期にかけては、大阪や京都で良質の木綿として高く評価された“平田木綿”の集散地として発展し、綿花流通の道として「木綿街道」と呼ばれるように。創業三百年の菓子屋をはじめ、造り酒屋や醤油店などがあり、町歩きを楽しむにはもってこい。

斐伊川
(写真提供:島根県観光写真ギャラリー)
たっぷり一日楽しんだ後は、斐伊川(ひいかわ)の夕景でしめくくり。全長 153km、中国山地の船通山から流れだし、出雲平野を横切って宍道湖へと至る河川。この川が天井川になったのは、かつて上流で「たたら製鉄」が行われ、砂鉄を採取するための「鉄穴(かんな)流し」によって大量の土砂が流されたためという。なんか“もののけ姫”の世界だね。また、古事記に登場する肥河(ひのかわ)、上流で素盞鳴尊が八岐大蛇を退治した川がこの川だともいう。神話の国の風景は、なぜかどこまでも奥深いのである。

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レポーター

岡崎 聡

「町旅」編集部

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