吟醸酒のふるさと、東広島の魅力 ~酒造りに賭けた男たちの物語~
<広島県東広島市>

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クセのない口当たり、フルーティーかつ辛口、すっきりした味わい、そして後に残らぬ酔い心地。昨今人気の旨い日本酒といえば、大吟醸あるいは吟醸などと呼ばれる酒が多い。この吟醸酒が生まれるのには、東広島が大きく貢献したということをご存知だろうか?
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“吟醸酒の父”とも呼ばれる「三浦仙三郎」(↑安芸津・榊山八幡神社の銅像)は、現在の東広島市安芸津町の出身である。酒造業は殖産興業とともに明治期に大きく発展したが、広島には酒造家にとって不利な条件があった。それは、広島の水が、酒造りには適さない軟水であったことだ。軟水には酵母の栄養分となるミネラル分が少なく、通常の醸造法ではうまく発酵が進まなかったのだ。この不利な条件を逆手にとって、仙三郎は「軟水醸造法」という画期的な製法を確立し、ふくよかでキメ細かな酒を造りだしたのである。
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また吟醸酒誕生に大きく貢献した人物として、現・東広島市西条町出身の「佐竹利市」を忘れるわけにはいかない。日本初の動力式精米機(↑写真)を完成させ、佐竹機械製作所を創立して、金剛砥石を使用した画期的な精米機「竪型金剛砂精米機」を開発したのだ。ちなみに、精米歩合60%以下が吟醸、50%以下が大吟醸なのだが、50%以下にするには機械精米で2昼夜もかかるのだという。つまり重労働かつ非効率な足踏み式精米機では、とてもじゃないが不可能だったわけだ。
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東広島を中心とした酒造りの歴史に貢献したのは、三浦や佐竹というイノベーターだけではなかった。国の醸造技師として試験場に赴任してから、終生広島を離れずに杜氏の育成や酒質の向上に尽力した「橋爪陽」、賀茂鶴酒造の創業者であり酒造学校を造って「軟水醸造法」を世に広める努力をした「木村静彦」など、この地にかかわる多数の人たちの工夫と努力があったからこそなのだ。
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東広島市西条が日本三大銘醸地のひとつを謳っているのは、こういう歴史に根拠があるのだ。現在も西条には多数の酒蔵が操業しており、大きな蔵の甍が連なりレンガ煙突の立ち並ぶ眺めは、まさに酒造りの都と呼ぶにふさわしい。もちろん良い酒造りは、水と米。町に湧き出る竜王山の伏流水、広島を代表する酒米「八反錦」、そのルーツである「八反草」、盆地ならではの寒暖差など、ここが銘醸地として名を馳せるに至った条件はたくさんある。
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これら良い酒造りに欠かせない条件は、まさに豊かな自然環境ということでもある。海側の安芸津は、生産量日本一を誇る広島の牡蠣を養殖する拠点であり、その旨さは折り紙つき。
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同じ安芸津の赤い粘土質の畑で採れる赤ジャガイモは、でんぷん質が多くとてもホクホクしていて甘い。コロッケにすると絶品である。
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西条のグルメといえば、この美酒鍋。味付けはとてもシンプルで、たっぷりのお酒と塩・胡椒のみ。それだけに素材そのものの旨みを酒が引き出し、あっさりしたなかに奥深い味わいが楽しめる。
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ここでは紹介しきれない東広島の魅力はまだまだあるが、最後に「酒まつり」を紹介しよう。毎年10月初旬の土日に催され、とにかくもう町中が酒一色、人出が20万人を超えるというから、ちょっと他所にはない規模である。二日間しこたま呑めるということで、酒好きにはたまらないイベントである。左党の方はもとより、そうでない方も、ぜひ一度訪れてみてほしい。酒はただの飲み物ではない、文化なのだ。連綿と続く酒造りの伝統を大切にし、この町に誇りを持つ地元の方々の意気込みと熱い想いが伝わってくる、それこそが「酒まつり」の本領だと思う。

INFORMATION

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レポーター

岡崎 聡

「町旅」編集部
今年も東広島市西条では「酒祭り」が開催される。酒ひろばには、全国からおよそ1000銘柄の日本酒が集まり、入場料を払えば飲み放題。そのほか催しものも多彩。とにかく10月7日・8日の土日は、西条の町は酒一色に染まる。日本酒党の人は、ぜひ一度訪れてみてください。

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