鎌倉時代の興亡が悲しい跡を落とす、歴史に彩られた伊豆最古の温泉地
〈静岡県伊豆市〉

伊豆半島の中で、もっとも古い歴史を持つ修善寺温泉は、大同2年(807年)に弘法大師がこの地を訪れたさいに『独鈷の湯(とっこのゆ)』を湧出させたとする話を起源としています。室町時代後期には、やがて関東一円を配下に治めることになる北条氏の祖となる早雲が修善寺に湯治と称して間者で忍び込み、その後の『討入り』への下準備をしたと言われています。
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明治から大正にかけては、夏目漱石や川端康成をはじめとする文豪たちが湯治に訪れたことでも知られる修善寺。これまで多くの文学作品のなかにも登場し、その町並みは現在でも当時の面影を色濃く漂わせています。※注・写真中央は現在の『独鈷の湯』。
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桂川沿いにかかる朱塗りの橋。“伊豆の小京都”と呼ばれるにふさわしいしっとりした情緒が感じられる散策コースです。
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桂橋を渡った先の『竹林の小径』も、文学作品の舞台にぴったりな古都の風情が感じられます。
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さらに、歴史好きなら立ち寄りたいのが『指月殿』。23歳の若さで修善寺に幽閉され、その後、祖父である北条時政がさし向けた刺客により殺害されたとされる源頼朝の息子・頼家の菩提を弔うために母である政子が建てた経堂で、伊豆最古の木造建築と言われています。
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『指月殿』の中に安置されている御本尊の釈迦如来坐像。静岡県の指定文化財で、右手に蓮の花を持っているたいへん珍しいお釈迦さまです。
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頼家ばかりではなく、父である頼朝の弟、頼家にとっては叔父にあたる源範頼もここ修善寺で亡くなりました。兄である頼朝に謀反の疑いをかけられた末の非業の死(自害)という説もあります。ここ『日枝神社』の境内には、源範頼が幽閉され住んでいたという信功院跡(庚申塔のみ現存)がいまも残っています。
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また『日枝神社』は、明治元年に神仏分離令が発令されるまで、修禅寺の山王社(鎮守)でした。修禅寺と隣り合わせなのもそのためで、現在は、根元が一つにつながった樹齢約800年の『子宝の杉』のご利益を授かりに若い夫婦が訪れることでも知られています。
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温泉街の中心にシンボルのように鎮座する修禅寺。温泉とおなじく、こちらも弘法大師を祖(弘法大師により創建)としています。鎌倉時代の貴重な遺品類を多く収蔵することで知られる宝物殿(宝物館)では、岡本綺堂の『修禅寺物語』が生まれるきっかけとなった頼家の面も見られます。
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大晦日の「除夜の鐘」には、大ぜいの参詣客が並ぶことでも知られる境内脇にある「鐘楼堂」。丸い石積みの上に組まれた木の堂が、周囲の緑と調和する姿は、まさに日本の美!
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質素でありながらも格調が感じられる本堂とその建築。弘法大師にはじまり〜鎌倉時代〜そして文豪たちが訪れた明治・大正時代〜現在へ。ときに暗い翳を落としながらも、絶えることなく続く“ニンゲンたちの営みと暮らし”をこの寺はずっとこの場所で見守り続けてきたのかもしれません。
 
写真:乃梨花

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レポーター

乃梨花(「町旅」女子部)

ひとり暮らしの猫飼い人ゆえ、
長らくショートトリップ派・・でしたが、
最近は、猫を預けて遠くまで足をのばすこともしてます⭐️
(➕日本酒党❤️)

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