地元ボランティアの方と歩く

職人の系譜を垣間見る伝統工芸の町
<福島県二本松市>

nihonmatsu_6_0酒造とともに二本松の産業として有名なのが二本松伝統家具。二本松藩初代藩主・丹羽光重が城の大改装を行った際に、数多くの建具や調度品も作らせたことが始まりとされ、約300年の伝統を持つといわれている。
 
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昭和期にはおよそ50店もの家具屋があり、そのうちの20数店が二本松城の東南に位置するまっすぐな坂道「竹田坂」にあったそう。全盛期から店舗数は減ってしまったが、いまでも家具の町といわれ伝統を守り続けている地域だ。
 
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その竹田坂でひときわ大きな間口を構えているのが、1891(明治24)年創業の鈴木木工所。設計・製造・塗装をすべて自社にて行い、職人の心と技が途切れることなく息づいている家具屋である。shigi_12_0525b
 
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案内してくれた社長の鈴木文子さんも自ら木材の買い付けに行き、家具の設計図をひかれるそう。ちょっと早口が特徴の語り口で、二本松伝統家具や嫁がれてきたころのことなど愛嬌たっぷりで教えてくれた。
 
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店内に足を踏み入れるとまず目にとまるのが、国内産の材料を職人の手作業で組みあげた二本松民芸階段箪笥。ふくしま特産品コンクールで大賞を受賞し、数々のメディアにも掲載されている作品だ。
 
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撮影を始めると文子社長が引き出しを抜き出して、鈴木木工所が誇る技術「ほぞ組み剣先止め」や使っている木材(この作品は狂いがでにくい栓〈せん〉という木を使用)について説明をしてくれた。さらに、設計者として使用者の使い勝手を考えた工夫や伝統的な隠し棚などは、実演しながら解説。そのすべての言動が、伝統家具に対する愛情と誇りに満ちており、聞かなければわからない価値に気づかせてくれる。
 
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広い店内の1階はほぼ伝統家具で占められており、鈴木木工所の主力が職人による手作り家具ということがわかる。2階には洋風家具も置いてあるが、全体の比率をみても伝統家具の方が多い。ノボリに書かれている『二本松城家箪笥(にほんまつしろやたんす)』とは、二本松木工家具協同組合の共通ブランド。伝統を守り発展させるべく、現代的な要素を取り入れて今どきの生活にあうよう洗練された家具がラインナップされている。
 
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店舗のうらに抜けると伝統家具展示蔵と工房があり、まず蔵の方を案内してもらった。
 
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中に入るとさまざまな一品造りの家具が並べられ、手書きの説明が添付されている。見ると明治期につくられたものや賞を受賞した工芸品に加え、鈴木家で代々使用されてきた家具なども展示されていた。
 
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現社長の文子さんは、嫁入り後しばらくはこの蔵に住んだそうで、さまざまな逸話も聞かせてくれた。なかでも印象に残ったのは、姑さんから「蔵には常に水を置いておけ」と言われていたという話で、近所で火事があったとき、初めてその意味や重要性が分かったというもの。伝統とは、技術のみでなく生活様式や生き方も含めて受け継がれていくものなのだろう。
 
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ちなみに、カイドの鴫原(しぎはら)さんは、震災復興を祈り108体もの仏像を彫りあげており、木に関しての知識も豊富。文子社長との「木材トーク」も盛り上がっていた。このように、鈴木木工所では直接商いにつながらないことでもいろいろ教えてくれるので、仕事の邪魔にならない程度で色々聞いてみるのもアリ。
 
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蔵のあとは隣にある職人さんたちの工房へ。古い箪笥や棚が置いてあるのは、家具の修理や補修も受け付けているから。「良いものは長く使える」という言葉は、使用者に愛着が湧くのはもちろんのこと、作品に対する製造者側の誇りや愛情があって成立するのかもしれない。
 
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鈴木木工所が最もその技能を発揮するのが一品造りと呼ぶフルオーダーメイド。素材・形・サイズ・色など、お客の要望にあわせて社長が設計図をひき、家具一級技能士の小林英治さん・本田真一さんを筆頭とする数名の職人で、家具作りのすべての作業が完結可能。この世に一つだけとなる一品造りは、婚礼時や家屋の新築時に注文される方が多いそうだ。
 
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伝統として守り続けていることは何かと聞くと「作り方はもちろんだけど、とにかく作ること。職人は作らなきゃダメ」という言葉が帰ってきた。おそらく鈴木木工所で代々言い続けられてきたであろうその言葉からは、伝統工芸とは日々の作業の積み重ねであるという重みを感じた。 絶え間なく磨き続けられる技術は、ぜひ実物を見て確認してほしい。
 
つづく
 
取材協力:二本松市役所観光課

INFORMATION

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レポーター

恩田 正恒(町旅編集部)

実は取材日の次の日もお邪魔して文子社長の個人的「古道具コレクション」も見せていただきました。ご本人が使っていたという箪笥や裁縫箱のほかにも、近郊から届けられたという珍しい古家具・古道具が数多くあり大興奮。人が乗るための駕籠(時代劇でみるあれです)なんて初めて間近で見ました!

心残りは「食べれ」といって出していただいたお団子の購入先を聞けなかったこと。すごく美味しかったので土産に買いたかったのもあるのですが、和菓子は二本松の名産のひとつなので、取材先として紹介してもらえば良かったと後悔。(←後日「玉家玉振堂」さんというお店と教えていただきました。僕が食べた団子はHPには掲載されていませんでしたが、一本ごとに包装されていたのでお土産にもいけそう。特に「ずんだの団子」が超オススメ! 「取材中なのに自分一人だけが食べてしまい恥ずかしいな~」と思いながらも食べ続けるほどです!)

【二本松観光ボランティアガイド協会 事務局】
一人旅から団体旅行まで二本松市の歴史やみどころを無料で案内してくれます。 
電話:0243-55-5095  ※10日前までに予約が必要  

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