霊峰「大山」の麓にひっそりと息づく農村集落「所子(ところご)」
〈鳥取県大山町〉

古くからの景観が残っている農村といえば、山間の村落がおおいのだが、こんなに開けた土地で伝統的な集落が残っているのは珍しい。広い水田に囲まれた集落の風景は、まさに日本の原風景といえるだろう。
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中世には京都の下鴨社領であったという所子集落。近世初頭頃には現在の集落の祖形が形成されたそうだ。集落内を通る大山参詣道(坊領道)沿いには、門脇家住宅(重要文化財)、南門脇家住宅(県指定保護文化財)、東門脇家住宅・美甘家住宅(国登録有形文化財)など、近世から昭和初期に建てられた貴重な建築物が残っている。また、大山から日本海へ流れる阿弥陀川から引いた水路には、きれいな水が豊富に流れ、かつての農村集落の景観がよく保存されている。
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江戸時代には大庄屋を勤めた門脇家住宅の主屋は、明和6年(1769)の建築になる寄棟造茅葺の大型民家である。土間の上手には三列九室からなる広い居室部を設け、巨大な梁が交錯しているとても豪壮な建築である。山陰地方の民家建築を代表するものといっていい。
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出雲地方で産出される「来待石(きまちいし)」を加工した棟石。端部が反り上がったハナイシと端部以外のヒライシを棟に乗せてある。強風や積雪に対応した山陰地方独特の素材である。
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旧所子郵便局。大正7年に門脇家が自宅の一角で開設したが、その後駅前へ移転され、いまは看板とポストが残っている。
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賀茂神社は、所子に残る唯一の神社で、明治以降に周辺の神社を合祀している。本殿は、大正初期頃は千木を付け檜皮葺の社殿であったが、現在の社殿は大正3 年(1914)に造営されたもの。
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「サイノカミさん」は、疫病や災厄が村に入るのを防ぐとともに良縁をもたらす神。現在も12月14日の深夜に、しめ縄を張り替え藁馬を供え、近くの木に大草鞋を吊るして祀りをするのだという。貴重な古い習俗が息づいている。
所子は、阿弥陀川の水利を利用した田畑を生産基盤として発展した農村集落で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。伝統的な建築物はもちろんだが、古い地割や集落の構造、集落内や農地をめぐる水路など、伯耆地方の伝統的な農村集落としての歴史的風致を形成しているところがすばらしい。
 
写真/岡崎聡

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岡崎聡

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