中山道と三州街道の交点であった「本棟造り民家」が連なる町並み
<長野県辰野町>

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三州街道は、三河湾で産出された塩を松本に運ぶために開かれたことから名付けられたが伊那地方を貫いていることから伊那街道とも呼ばれている。街道沿いにはいくつか宿場町があるが、訪れた小野宿はなかでも比較的大きな宿場町だ。
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電車の車窓からも確認できるが「本棟造り民家」が連なる町並み景観が小野宿の魅力でもある。本棟造り民家は長野県の松本を中心とした中信地区や、伊那地方など南信地区などで多く見られる木造民家の形である。切妻造りで緩やかな屋根こう配が大らかさを醸し出し、「雀おどし」または「雀おどり」と呼ばれる棟飾りが特徴で、その姿は堂々としており実に優美である。
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緩やかに国道がS字カーブを描く地点にさしかかると、軒が深く二階部分がせり出した「せがい造り民家」が連なる町並みが目に入って来た。よく見るとその先には本棟造りの民家がそそり立っている。折しも雨が降りだした。雨に煙る里山を背景に連なる本棟造りの町並み景観は、まるで墨絵の世界だ。
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宿場内の建物のなかでも、広い間口を持った小野家住宅(長野県県宝)は際立った存在である。1859(安政6)年の大火後に建造された大規模な本棟造り民家で、間口十間半、内部は四列に割って居住スペースを確保している。小野宿に本陣は無く、小野家住宅がその代わりを務めた。その証が式台玄関から続く二つの部屋と上段の間の設えである。清楚な庭も整えられていて品格を感じる。
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そばに寄って建物を仰ぎ見るとその重厚さに圧倒されてしまう。その上、繊細な出格子や猿頭を載せた軒などの意匠から伺える伝統の技に触れることができる。「雀おどし」や巧みな彫刻が施された懸魚も見事だ。「ころび」と呼ばれる手法で懸魚が街道寄りにせり出すように設えられていることで、建物を横や斜めの位置から眺めると一層ダイナミックに見えるから不思議だ。街道を挟んで本棟造りが睨み合っているように見える姿も小野宿ならではの特徴的な景観のひとつであろう。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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