「相場崩しを嫌う」地域コミュニティの思想がいきづく匠のふるさと
〈岐阜県飛騨市〉

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飛騨といえば、その次に来るのは「高山」と相場が決まっている。ところが、高山より歴史が古いのが飛騨古川なのだ。高山に城下町を定めた金森長近が、それ以前に古川に小規模な城「増島城」を築いたことがその理由である。
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そんな飛騨古川は飛騨の匠のふるさとである。古くから全国の社寺建築などを手掛けた名工の仕事は、町の随所に見られる。「相場崩しを嫌う」とは古川の町衆がよく使う言葉だが、「金」ではなく「町」の相場のことなのだ。伝統の町並みを崩すようなみっともない建物は建てないという意味で、建物を通じて近隣の和が保たれているのである。
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そのため、現在でも格子をそなえた木造二階建て様式で、よく似た外観を持つ町家が町並み景観を形成している。注意深く見ると新旧入り混じっているのであるが、統一感溢れる町家が壱之町、弐之町、三之町に整然と連なり、古川の品格を保っているのである。
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町家が続く路地を抜けると瀬戸川の清流に出た。瀬戸川には宮川から引かれた水が勢いよく流れ、丸太のような鯉が群れをなして泳いでいる。「ゴミで汚れる瀬戸川の清流をとり戻す秘策は、子どもたちに鯉を放流させること」が発端だった。間もなく訪れる冬場は融雪溝の役割を果たすから、鯉は山里の田んぼに疎開させる。可愛らしい鯉は成長して町の名物となった。あわせて町も、歴史を活かしたまちづくりの先進地として全国的に有名になった。いずれも市民の地道な努力の成果なのだ。
 
写真:米山淳一

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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