雪国ならではの内蔵が残る増田町。荘厳な蔵の空間に圧倒される。
〈秋田県横手市〉

主屋の覆いの下に、内蔵が建つという豪雪地帯ならではの特殊な構造。蔵ごと建物に守られているので、豪勢な造りの蔵が、すばらしい状態で保存されている。
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簡素な造りの「覆屋」に包まれた内蔵は、外観からは全容がわかりにくいが、商家の通り庭のような細い通路を抜けて内蔵を目の当たりにすると、その存在感に圧倒される。白や黒の漆喰をてかてかに磨き上げた外観は、輝いている。重々しい内蔵の扉を開けて一歩中に入れば、もうそこは別世界。時代物の家財道具がずらりと並び、その奥は主人専用の蔵座敷になっている。盗賊からの守りを考慮して四寸柱を人の頭が入らない間隔で並べ、その間を漆喰で塗り籠めている。梁は二尺もあろうか、とにかく太い。柱も漆喰もピカピカに磨き上げられ、まさに工芸品の品格を感じさせる。
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造り酒屋の内蔵では、柱、梁、建具が春慶塗で仕上げてあり、また肥料店の内蔵では、扉や腰まわりの防護建具が漆塗りの繊細な建具で覆われており、たいへん印象的。どの商家も敷地はウナギの寝床のように奥に深い。そして通り沿いの主屋よりも、奥に位置する内蔵が贅を尽くした造りになっている。増田町の商家街は、蛍のように後部が光り輝いていて、明治の中頃まで「蛍町」と呼ばれたそうだ。
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増田町は横手盆地の南東部に位置する商業都市である。舟運や山形からの街道の拠点でもあり、交通の要衝として発展した。商いの主流は、葉タバコと養蚕である。明治38(1905)年に奥羽本線が全通して十文字駅ができると、より効率的な輸送によりさらに発展した。十文字駅構内は意外と広く、懐かしい跨線橋、引き込み線の跡、そして駅前の倉庫などが残っている。
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また、明治期には水力発電所や増田銀行(現・北都銀行)が成功をおさめ、この地方の産業、経済の中心地となった。さらに大正期には鉱床が発見され、銅の産出によっても経済発展を続けた。それら蓄積された富の証が、今日も商業活動の中心になっている中七日町通りにずらりと並んだ商家群である。多くは二階建ての豪壮な木造建築で、豪雪地帯らしく見た目にもしっかりした構造である。重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
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写真/米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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