A・レーモンドの美しい建築と別荘気分が同時に味わえる「イタリア大使館別荘記念公園」
〈栃木県日光市〉

「イタリア大使館別荘記念公園」は中禅寺湖畔の自然に囲まれた景勝地にある公園です。このあたりは、明治中頃から昭和初期にかけて各国の大使やその家族、また多くの外国人のための別荘が集まる避暑地でした。昭和3年にイタリア大使館の別荘として建てられたこの建物は、平成9年まで歴代の大使がじっさいに使用していたもので、現在は一般公開されています。
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別荘の設計者は、チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド(1888-1976年)。旧帝国ホテルを設計する際に世界的建築家として知られるフランク・ロイド・ライトの助手として共に来日しました。40年以上にわたり日本に滞在する中で、400点以上もの設計に関わるなど、日本の建築界に大きな影響を与え「現代建築の父」とも呼ばれています。
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別荘「本邸」は二階建ての木造建築で、レーモンドは設計の際に地元の職人たちにどのような建材が適しているかを相談したそうです。結果、外壁の正面部分は地元特産の日光杉を樹皮と薄い板に分けて市松模様にしたモダンで美しい意匠に仕上がっています。
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一階の天井は、全て杉皮を使い、日本の数寄屋建築にも見られる網代に組まれています。食堂を含むリビングと書斎がひと続きの広い空間に収まる室内は、網代の模様でそれぞれの空間を分ける工夫がされており、レーモンドの技とセンスが光ります。
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書斎の窓からは、建物のバックヤードである森の木立と副邸が見えます。木々の梢が落とす緑の影と木漏れ日が、静謐で落ち着きある空間をつくっています。
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中央の居間を挟んで書斎と反対側に位置する食堂エリアには、書斎の暖炉と対をなす石積みの暖炉が対照に配置されています。注目は暖炉の上の網代模様。こちらが市松模様なのに対し、書斎側はひし形。よく見るとそれぞれの部屋の基調のパターンとちょうど互い違いになっています。このような細部にもレーモンドの工夫と遊び心が溢れています。
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低めに位置する広縁から外を眺めると、目の前には風にたなびく水面が光る青く澄んだ湖、その背後には錫ヶ岳や白根山などの緑の山々がそびえます。この美しい景色をぼんやり眺めながら、ソファーに腰かけ、心ゆくまでくつろぐのもおすすめです。
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じっさいに、この中禅寺湖を臨む広縁は、訪れた人が思い思いに好きなだけのんびり過ごせるように居心地よくしつらえてあります。開放感あふれる心地よい空間に身をひたし、体も心も深くリラックスしているうちに、たまった疲れも解けていくようです。
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2階はおもにプライベートな空間に使用されました。この大使が使用していた寝室はまるでアジアンリゾートのゲストハウスのよう。「日常から切り離された癒しの空間」がリゾートの定義の1つだとすると?そのままぴったりと当てはまりますね。
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一方、客用寝室は壁に横板の嵌木を使用しているため、ロッジ風でより開放的な雰囲気。大使の寝室のブルー系(男性イメージ)に対して、こちらはピンク系(女性イメージ)でまとめられており、対比の効果が目に鮮やかです。
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建物裏の玄関を含めた外観部分です。表とはパターンを変えて、杉の板材を均一方向(ボーダー)に並べているのがわかります。光の加減では、象嵌された金細工にも見え、芸術的な色彩を帯びています。
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建物の横に廻ると、内側からは見えない丸石を積んだ暖炉の外側が見られます。安らぎとぬくもりを覚えるのは、英国の湖岸地方に残る石積みの家に見られるような素朴なつくりだからでしょうか。天然石の魅力を十分に引き出しています。
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本邸から少し離れたところにある副邸は、歴代の大使たちの船遊びやフィッシングの様子のビデオが見られる展示室と、往時の別荘の様子などを伝える資料がパネルなどで展示されています。
 
写真:乃梨花

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乃梨花(「町旅」女子部)

ひとり暮らしの猫飼い人ゆえの
ショートトリップ派
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