住民の熱意で蘇った
蒸気機関車の汽笛が響く町
〈鳥取県若桜町〉

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若桜の町は旧因幡街道の宿場町として、その面影を色濃く残している。緩やかに傾斜した街道筋には、歴史を感じさせる町家が並ぶ。道の両側の用水路を勢いよく清らかな水が流れ、歩いていると水の音が耳に優しく響く。若桜は水の町でもあるのだ。
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歴史的な町家は江戸後期から昭和初期のものが多く、建物の街道寄りに、格子やお仮屋と呼ばれる下屋を設けているのが特徴である。一部が今も健在で、安全な歩行空間を得るための役割を持つ、公共空間になっている。
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町家の裏手には立派な土蔵が多く見られる。林業が華やかな時代に財をなした町の姿を物語る証でもある。特に西方寺の門前の細い通りには、12棟にもおよぶ土蔵がずらりと並び壮観だ。全国的に見ても稀な歴史的景観といえる。
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道も町並みも歴史性豊かな若桜の町のみなさんは、ことのほかまちづくりには熱心である。駅構内の風景にすっかり馴染んでいる蒸気機関車は、町のみなさんの募金によって兵庫県の多可町から里帰りさせたものだ。旧国鉄時代に若桜線で活躍したC12形蒸気機関車167号である。お飾りでもモニュメントでもない。汽笛を鳴らし、構内をそろりそろりと動いて見せてくれる。そう、立派な動態保存機なのである。タネを明かすと、圧縮空気で走らせている。。町のみなさんは、蒸気機関車の汽笛が響くのを聞くたびに「鉄道も町も生き返った」と大喜びなのである。
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そして、NPOの仕掛けたまちづくり活動の次なる方策は、「若桜鉄道丸ごと文化財」であった。町のみなさん、鉄道関係者、商工会、行政、専門家が力を合わせて開業当時の駅舎、構内の建造物、橋梁、落石覆いなどの構造物23件を国の有形登録文化財としたのである。
 
写真:米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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