日本遺産の物語

北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並〜江戸優りの商家町「さわら」でぶらりレトロな商家建築めぐり
〈千葉県香取市②〉

利根川舟運の中継地として栄えた佐原には、江戸時代から続く商家が老舗として、現在も数多く残っています。それらは歴史的な建造物としても価値があり、とくにここ数年、文化庁選定の重要伝統的建造物群保存地区となってからは、その魅力にいっそうの輝きが加わりました。今回は、そんな佐原の味わい深い建物をじっくりと見ていくことにします。
IMG_7283佐原のシンボルとしても知られる三菱銀行佐原支店日本館は、大正3年(1914)に建てられたレンガ造りの2階建の洋館です。屋根は木骨鋼板葺き、正面にはドームが設けられており、外観は基本的にルネッサンス様式です。内部は吹き抜けで、2階周囲には回廊が施されています。明治期のレンガ造建築の様式をたずさえた、モダンで意匠的にも優れた設計です。
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安政2年(1855)建築の中村屋商店は、代々畳材料や雑貨などを扱ってきた商家です。ここは、香取街道と小野川に面した変形の土地の角にあるため、母屋の角には五角形の珍しい柱があることでも有名。低めの2階部分の外には回廊の手すりの様に幅木が回され、軒は銅版で葺かれるなど意匠にも工夫が見られます。また内部は架構に工夫を凝らした造りとなっています。
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正文堂は、江戸時代から書物の販売、出版などを営み、伊能忠敬もここで本を買い求めたといわれる書店です。東日本大震災では多大なダメージを被りましたが、現在では修復を終え、美観を取り戻しています。明治13(1880)年建築の切妻平入り2階建て(3階に改造)の土蔵造り。屋根瓦は幅の狭い丸瓦を使用した本瓦葺きで、黒柱にはケヤキを使用し、2階の窓には「土蔵の開き」「横引きの土戸」「板戸」と三重の防火設備が設けられるなど、全体に重厚感が漂う造りです。
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香取街道と小野川が交差する忠敬橋(ちゅうけいばし)の袂(たもと)にある絵になる中村屋商店と、通りを挟んだ向かいに威容で佇む正文堂。どちらも佐原を代表する江戸の商店建築で、肩を並べる景観にはなにやら迫力さえ感じられます。
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小堀屋本店は、1782(天明2)年創業の老舗のそば屋で、代々家宝として受け継がれてきた秘伝の麺の製法による名物「黒切りそば」でも有名。昆布の粉を練り込んだ真っ黒な麺は、1度は試してみたいもの。週末に店の前に行列ができる光景も、いまやすっかりおなじみです。
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中村屋乾物店は、明治25年(1892)に佐原を襲った大火直後に当時最高の技術を駆使した防火構造により建てられました。壁の厚さは1尺5寸(約45cm)と厚く、2階の観音開きの土扉が看板にもなっているのが洒落ています。建築当初とほとんど変わらない姿を保っているそうです。
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佐原ではもっとも古い歴史を誇る旅館のひとつ、明治34年(1901)建築の木の下旅館。少し驚く意外な料金でこの歴史ある建物に泊まることができるのは、案外まだ知られていません。
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小野川沿いから見た植田屋荒物店(の白い土蔵)。創業250年になる江戸中期からの荒物(ざる、かご、箸、いぐさ、ゴザ、スリッパ、たわし、扇子、調理道具、食器、茶道具などの生活雑貨)の老舗です。こちらの暖簾がかかっている蔵への出入り口は、現在は通りぬけできず、蔵の中へは香取街道沿いにある店舗奥から入れるようになっています。蔵は現在、店舗の一部として利用されているため、出入りが自由。土蔵の中を探検気分でのぞくだけでも一興です。
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江戸から続く老舗で伝統に培われた品物を見定めしながら、小江戸の風景の中をのんびり散策していると、時間もゆっくり。気持ちもほぐれていくように感じます。
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文化4年(1807)創業の千本格子が美しい割烹「宮定」。もとは、魚問屋で蒲鉾を製造・販売していたそうです。
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虎屋菓子舗は、創業が明暦3年(1657年)の老舗。地元産のさつまいもを使った「芋ようかん」や落花生入りの「楽菓もなか」などが人気で品揃えも豊富。紀の国屋商店は「佐原まちぐるみ博物館」のひとつで、初代当主が買い求めた陶漆器などの骨董品が展示されています。
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馬場本店酒造は、天保年間(1681〜1683)創業。もとは佐原の地で糀屋(こうじや)からスタートし、170年ほど前の天保十三年の時から酒造りを始めました。清酒と合わせて製造販売している白味りんの「最上白味醂」は当時の製造法が受け継がれたままの約160年にもわたるベストセラー。また建物の中でもっとも目を引く煙突は高さ13m、明治31年の建築で、イギリスから輸入したレンガ積みの構造。その壮観な構えは、酒蔵のトレードマークにもなっています。
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東薫酒造は、江戸文化が華やぐ文政8年(1825)の創業と伝わる老舗。歴史と伝統を感じさせる酒蔵では、無料の酒蔵見学と試飲サービスを毎日行っており、ツアー客も多く訪れます。東薫の酒を造っている杜氏の及川恒男氏は、越後や丹波と並ぶ日本三大杜氏のひとつ、南部杜氏400人を代表する酒造りの名人としても知られ、その酒は全国に名指しするファンを持ちます。
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小野川沿いの端に位置する与倉屋大土蔵は、明治22(1889)年に建てられた日本最大級の土蔵で、なんと!その広さは500畳分!何層にも張り巡らされた梁や蔵の持つ独特な雰囲気は撮影やコンサート、イベントなどにも広く利用されています。与倉屋は、江戸末期より戦前まで醤油の醸造業を営む商家として知られ、蔵は年貢米の貯蔵庫にも使われていた歴史があります。
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佐原の老舗のひとつ、正上(しょうじょう)の屋標(マーク)の入った土蔵(現在内部は改装されレストランに利用)の壁部分。正上は創業から200余年、江戸時代より醤油の醸造をしていた佐原を代表する老舗のひとつです。9代目の現当主からは、小野川沿いにある「いかだ焼本舗」の食品製造分野でも知られています。
 
写真:乃梨花

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