現存するわが国最古の機関車庫。小樽の魅力は、運河と海鮮だけじゃない
〈北海道小樽市〉

旧手宮鉄道施設にある木骨レンガ造りの機関車庫三号(国重要文化財)は、1885(明治18)年に製造された現存最古の機関車庫である。豪雪と経年のため梁に損傷が生じていたが、近年補強に鉄骨を組み込んで見事に復元された。
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1872(明治5)年、新橋~横浜間に日本初の鉄道が敷設されてから遅れること8年、幌内鉄道の手宮~札幌間が開業したのは1880(明治13)年11月のこと。幌内鉄道の敷設工事は新橋・横浜間とは異なり、英国の技術によるのではなく、米国から技術者を招き敷設している。幌内地区の豊富な石炭を、鉄道によって小樽(手宮)港まで運ぶことが最たる目的だった。蒸気機関車は米国H・K・ポーター社などから輸入されている。
庫内には日清戦争の勝利を記念して1895(明治28)年に手宮工場で製造された現存最古の国産蒸気機関車「大勝」号と、レールバスキハ03形1号が静態保存されている。車庫の中で機関車の修理ができたのもこの建物の特徴である。同館は幌内鉄道時代の手宮機関車庫を核に、北海道ゆかりの国鉄特急形キハ82系気動車をはじめ、多数の車両を保存展示して人気を博している。中でも幌内鉄道時代の貴重な蒸気機関車である1884(明治17)年米国製の7100形「しづか」号は保存車両の目玉、アメリカの西部開拓期を思わせるようなスタイルがおもしろい。
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札幌から小樽の町を訪ねるには函館本線が最適だ。銭函駅を過ぎた辺りからは、電車は石狩湾に沿って、右に左に身をくねらせながら走ってゆく。ひなびた漁村や岩礁をかすめ車窓風景はまさに絶景。進むにつれて美しい海のかなたに、小樽の町が見え始める。
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小樽駅から歩いて10分もすれば小樽運河に出る。1923(大正12)年に開削された運河は、港町小樽の発展の生き証人である。ヘドロがたまって汚い、時代遅れなどの理由から、埋め立ての動きが活発になるのに対抗して、「運河は小樽の顔」として小樽運河を守る市民運動がはじまった。1975(昭和50年頃のことである。結局、運河は半分埋め立てられ今日に至っているが、半分になっても運河を訪れる観光客は多く、北海道の人気スポットのひとつだ。
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運河近くに昔からの問屋街の町並みが残っている。歴史的建造物の大部分はお土産店、寿司、海鮮のお食事処などに変身し、観光客やカップル、修学旅行生が出入りするハニーポット化していて京都の産寧を思わせる。一歩裏へ入ると、石造りの商家や倉庫が並ぶようすが、いかにも港町の風情が漂う通りである。この地区の多くの歴史的な商家は意匠を凝らした石造りだ。商家の路地を入れば倉庫が林立、古い民家まで混在している。
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外国人坂」というエキゾチックな名前の坂道を上ると、小樽の港が一望できる高台に通じる。上がり終えたところにあるのが、1925(大正14)年建造の洋館付き近代和風住宅。海運業などで財をなした実業家、板谷氏の旧宅である。
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外国人坂の上から眺めると、眼下には港の町並みが広がり、沖合いには、わが国初のコンクリート製の防波堤が一直線に海を仕切っている。明治41(1908)年竣工、港湾土木の父と呼ばれた広井勇博士の力作である。もしこの防波堤がなかったら、小樽港の発展はなかったであろう。
 
写真/米山淳一

INFORMATION

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レポーター

米山 淳一〔よねやま じゅんいち〕

獨協大学外国学部英語学科卒業。岸信介事務所を経て、75 年(財)観光資源保護財団(現(財)日本ナショナルトラスト)入所。事業課長、事務局長を経て、06 年退職。現在は母校の獨協大学等で講義を行うほか、地域遺産プロデューサーとして全国で歴史を活かしたまちづくりプロジェクトを推進。現在、公益社団法人横浜歴史資産調査会(ヨコハマヘリテイジ)常務理事・事務局長

一般社団法人 日本茅葺文化協会理事
一般財団法人 茶道宗偏流不審庵理事
日本鉄道保存協会事務局長
東映株式会社「大鉄道博覧会」企画プロデューサー
一般財団法人 東武博物館アドバイザー ほか


【著書】
●歴史鉄道 酔余の町並み(駒草出版)
  http://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=61024099
●続・歴史鉄道 酔余の町並み〈2016年2月1日発売〉(駒草出版)
●写真集「光り輝く特急「とき」の時代」(駒草出版)
◎「地域遺産みんなと奮戦記」(学芸出版)
◎「歩きたい歴史の町並」 文 米山淳一 写真 森田隆敏(JTBパブリッシング)

http://www.j-yoneyama.jp/

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